計算式の準拠先: Gillespie (1977); Odian "Principles of Polymerization" 4th ed. (2004), Ch.3。 計算はブラウザ内で行い、入力値はサーバーに送信されません。
単一モノマー(ホモポリマー)のみ対応です。 共重合(2種類のモノマー)や、ATRP・NMP・RAFTなどの制御ラジカル重合、連鎖移動反応は 扱えません。また応答速度を保つため、研究用途よりずっと小さい規模でシミュレーションする 簡易デモです。統計的なばらつきが大きく出ることがあります。本格的な精度が必要な場合は、 下記の出典にあるCLIツールを使ってください。
結果欄の「到達時間」はシミュレーション上の化学反応時間で、計算にかかる時間 ではありません(計算自体は常に数秒で終わります)。初期値のスチレン/AIBN例で 数十万秒(数日相当)と表示されるのは、遅い開始剤を使う実際の重合が本質的に遅いことの 反映です。詳しくは「前提・注意」を参照してください。
計算式
端末モデル・Gillespie Direct Method(kinetic Monte Carlo)。反応は開始・伝播・停止のみ (連鎖移動は含まない)。
- 反応スキーム
I --kd,f--> 2R・(開始剤分解、効率fでケージ効果)
R・+ M --ki--> P1・(連鎖開始)
Pn・+ M --kp--> P(n+1)・(伝播、鎖長によらず同一速度定数)
Pn・+ Pm・ --ktc--> D(n+m)(停止・結合)
Pn・+ Pm・ --ktd--> Dn + Dm(停止・不均化)- Gillespie Direct Method
- 各素反応のpropensity(反応速度)を分子数から計算し、次にどの反応がいつ起こるかを
指数分布・乱数で確率的に決めるアルゴリズム。二分子反応(異種) A+B の propensity は
k/(NAV)・nAnB、同種 A+A はk・n(n−1)/(NAV)。 - 定常状態近似によるRp(検証用、参考値)
Rp = kp[M]・sqrt(f・kd[I] / kt)(kt=ktc+ktd。反応初期、[I]・[M]が初期値のままの瞬間速度としてのみ有効)
前提・注意
- 単一モノマー(ホモポリマー)のみ対応。共重合・制御ラジカル重合 (ATRP/NMP/RAFT)・連鎖移動・分岐反応(バックバイティング等)は扱いません。
- Web版は規模を小さく制限した簡易デモです。ConoHa WING の CGI方式では 1リクエストの処理時間に実用上の制約があるため、モノマー分子数を研究用途よりずっと 小さい規模に固定しています。統計的なばらつきが理論値との比較で無視できないことが あります。本格的な精度が必要な場合は出典欄のCLIツール(ソースコード公開)を使ってください。
- PDI理論極限(1.5=結合停止のみ/2.0=不均化停止のみ)は「瞬間値」です。 バッチ重合を転化率が高くなるまで進めると、序盤(モノマー濃度が高く鎖が長く育つ)と 終盤(モノマー濃度が低く鎖が短い)の鎖が混ざるため、バッチ全体の累積PDIは 瞬間理論値より大きくなります(「連鎖長ドリフト」と呼ばれる、バッチ重合の既知の性質)。
- 結合・不均化が混在する場合のPDI理論値、共重合系の理論重合速度式(Walling式)は 裏取りが不十分なため実装していません(該当する場合は結果欄に理論値が表示されません)。
- 初期表示の値はスチレン(AIBN開始、70℃相当)の速度定数です (出典は「出典」欄参照)。ただし開始剤濃度は、Web版の小さいシミュレーション規模でも 十分な数の鎖が生成されるよう、実測でよく使われる範囲内でやや高めに調整しています。
- 「理論重合速度Rp」は目安に過ぎません。実測に近い希薄なラジカル濃度では、 計算可能な規模で生きているラジカル数が1を大きく下回り、疑似定常状態の仮定が崩れます (間欠的・バースト的な挙動になる)。このため定常状態近似によるRpは実際のシミュレーション 結果と1〜3桁ずれることがあります。詳細は出典欄のリポジトリのCLAUDE.mdを参照してください。
出典
- Gillespie, D.T. "Exact Stochastic Simulation of Coupled Chemical Reactions" J. Phys. Chem. 81, 2340 (1977). ― kMCアルゴリズムとpropensity変換式の根拠。
- Odian, G. Principles of Polymerization, 4th ed., Wiley (2004), Ch.3. ― 古典的なフリーラジカル重合速度論の定義・慣例。
- 着想元(ただし本ツールはポート・クローンではなく独立実装): TU Clausthal, mcPolymer ― itc.tu-clausthal.de (ATRP/NMP/RAFT・分岐・共重合まで扱う本格的な研究用ソフトウェア。GPLでオープンソース公開)
- 初期表示のスチレン速度定数: 伝播速度定数kpと停止速度定数ktは Buback, M. et al. Macromol. Chem. Phys. 1995, 196, 3267(IUPAC critically evaluated値、kp=107.630exp(-32.5 kJ/mol / RT)から算出)および Macromol. Chem. Phys. 2002, 203, 2570(ktのレビュー)に基づく (書誌情報を確認済み)。AIBNの分解速度定数kd・効率fは複数の教材・文献で 一致して引用される値を採用したが、一次資料までは未確認(⚠️)。詳細と数値の一覧は 出典欄のリポジトリのCLAUDE.md「スチレンの実例」を参照。
- 本ツールの実装(反応式・propensity計算)は、単体テストで検証済みの独立プロジェクト radpoly-kmc (ソースコード公開。本サイトには vendored コピーとして同梱)をそのまま呼び出しています。 質量収支・理論PDI極限・Mayo-Lewis式との 照合など検証の詳細は labochro リポジトリの docs/formulas.md §6 を参照してください。